「私たち患者だからこそ、できることがあるはずだ」
そんな切実な想いと、低ホスファターゼ症の「根治」という大きな目標を胸に、この度治療経過可視化・共有システム「ComNext(コムネクスト)」を開発しました。
ComNextは単なる便利なツールではありません。それは、私たち患者自身の力で未来を切り拓くための、そして、次の世代へより良い医療をつなぐための、私たちの決意の証です。
この記事では、ComNextがどのような想いから生まれ、何を目指しているのか、その開発の背景にある「想い」をお伝えします。
「なぜ、今ComNextなのか?」 私たちが直面してきた課題
低ホスファターゼ症のみならず指定難病には多くの悩みがつきものです。
治療方針、本当にこれでいいの?「ストレンジック®を使うべきか、それとも…」一人で悩み、主治医にうまく相談できないことも。骨の痛みが続く時、どうすれば和らぐのか、情報が見つからない不安。
知りたい情報に、たどり着けない…海外の最新治療や新薬開発、臨床研究の情報など、根治に向けた希望となる情報へのアクセスは、決して簡単ではありません。
大切な記録、どう管理すれば…血液検査の結果や日々の体調、お薬の記録。紙での管理は煩雑で、失くしてしまいそうな不安もつきまといます。痛みが出た時の詳しい状態や心の変化を、もっと正確に医師に伝えられたら…。
これらの切実な課題は、私たち自身が患者として、あるいは患者家族として、日々感じてきたことでもあります。
ComNextでできること:あなたの「記録」が、未来を照らす力になる
ComNextは、皆さまが抱える課題に寄り添い、治療をサポートするために生まれました。その中核となる機能は、私たちの「開発目的」と深く結びついています。
あなたの「声」を形に:日々の症状や出来事を簡単に記録・管理

「イベント・毎日の症状」機能:歯が抜けた、体育があって疲れた、痛みの度合いなど、日々の細かな変化や出来事を、その時の気持ちと共に記録できます。
「医療データ管理」機能:健康診断の結果、検査データ、お薬の情報を一元管理。医療情報管理アプリ「パシャっとカルテ」(※)と連携し、これまで蓄積したデータも活用できます。これにより、個々の貴重な体験や医療データが、客観的な記録として蓄積されます。
経験をつなぎ、知恵に変える:「つながる」機能

他の患者さんがどのような治療経過を辿っているのか、匿名化された情報にアクセスし、参考にすることができます。
(※プライバシーには最大限配慮しています)個々の記録が集まることで、他の誰かの「道しるべ」となり、治療選択の一助となることを目指します。
これらの機能は、単に日々の記録を便利にするだけではありません。その先にある、私たちの大きな「目的」につながっています。
(※「パシャっとカルテ」は、HPP HOPE代表理事がCOOを務めるArteryex株式会社が提供する、70万ダウンロードを超える安心の医療情報管理アプリです。)
ComNext開発の核心:私たちの譲れない想いと「根治」への挑戦
ComNextの開発は、ある一つの強い問題意識から始まりました。
「低ホスファターゼ症の根治研究を阻む最大の壁の一つは、私たち患者自身の詳細な医療データの不足である」
製薬企業、研究機関、そして日々患者さんと向き合う医師の方々との対話を通じて、この厳しい現実を突きつけられました。この「データの壁」を乗り越えなければ、真の根治への道は開かれない。ならば、私たち患者自身が主体となって、この課題を解決するしかない――その想いが、ComNext開発の原動力です。
まずは、患者さん一人ひとりの大切な医療情報を、安全かつ確実に管理できる基盤を作ること。そのために、既存の医療情報管理アプリ「パシャっとカルテ」とComNextを連携させ、日々の記録から専門的な検査データまでを一元的に集約し、整理できる仕組みを構築しました。これが、根治に向けた研究に不可欠な「質の高いデータ」を生み出すための第一歩です。
さらに、海外の患者会が国や研究機関と積極的に連携し、治療法の開発を力強く推し進めている姿は、私たちに大きな勇気と具体的な目標を与えてくれました。「日本でも、患者会が主体となって、根治に向けたムーブメントを本格化させたい」。その実現のためには、患者同士がつながり、情報を共有し、共に声を上げていくためのプラットフォームが必要でした。私の得意領域であるシステム開発の力で、その基盤を創り上げること。それが、私自身の使命だと感じています。
もちろん、個人の大切な情報を扱う以上、セキュリティには一切の妥協も許されません。最新の技術で情報を守ることは大前提。それと同時に、患者さんやご家族が、どんな状況でも「簡単に、毎日ストレスなく使い続けられる」こと。このシンプルさと使いやすさの追求にも、徹底的にこだわりました。
開発段階では、実際に患者さんにComNextの画面を試していただき、貴重なご意見を一つひとつ反映させていきました。この場をお借りし、ご協力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。
「ComNext」という名前には、私たちの強い願いが込められています。
- Complete(コンプリート):根治
- Connect(コネクト):つながる
- Next(ネクスト):次の世代へ
患者同士、医療者、研究機関。立場を超えた多様な「つながり」を育み、そこから生まれる力を結集して、低ホスファターゼ症の「根治」という大きな目標を達成する。そして、その恩恵を、今を生きる私たちだけでなく、未来を担う「次の世代」へと確実につないでいく。ComNextは、そんな未来を実現するための、私たちの挑戦の象徴なのです。
ComNextが目指す未来:希望をつなぐプラットフォームとして
ComNextは、単なる記録・共有システムに留まりません。私たちは、ComNextを通じて集まる一つひとつの貴重なデータや体験談が、大きなうねりとなることを信じています。
医療データの集積による、新たな治療法の開発促進
患者さんの日々のリアルな記録は、研究者にとって何物にも代えがたい情報源です。これらのデータが解析されることで、低ホスファターゼ症のより深い病態解明や、個別化医療、さらには新しい治療薬や治療法の開発へとつながる可能性を秘めています。
患者主体の医療参加の実現
ComNextを通じて、患者さん自身が治療に関する知識を深め、自らの状態を客観的に把握し、医療者とより対等な立場でコミュニケーションを取れるようになること。それが、患者さん一人ひとりが納得感を持って治療を選択し、主体的に治療に取り組む「患者主体の医療」の実現につながると信じています。
医療水準全体の向上への貢献
ComNextで集約された知見やデータは、個々の患者さんの治療改善だけでなく、低ホスファターゼ症全体の診療ガイドラインの最適化や、医療従事者向けの教育資材の開発など、医療水準全体の向上にも貢献できる可能性があります。

ComNextは、患者さん、ご家族、医療関係者、研究者、私たちNPO法人が手を取り合い、共に低ホスファターゼ症の未来を創っていくための、開かれたプラットフォームでありたいと考えています。
おわりに:ComNextと共に、希望ある明日へ
ComNextの開発は、低ホスファターゼ症と向き合うすべての方々の「なんとかしたい」という想いを形にするための、ささやかな一歩に過ぎません。しかし、この一歩が、いつか必ず「根治」という大きな目標にたどり着くと信じています。
あなたの声が、あなたの記録が、誰かの希望となり、未来を照らす光となるかもしれません。ComNextが、そのための小さな、しかし確かな架け橋となれることを、心から願っています。
私たちNPO法人HPP HOPEは、これからも患者さんとご家族の皆様に寄り添い、ComNextを通じて「根治」への道を共に歩んでまいります。
ComNextに関するお問い合わせ・詳細はこちらから:
お問い合わせ先:
HPP HOPE代表理事 小野澤メールアドレス y.onozawa@patient-rd.com
